地域にやさしい商店街

荒尾市中央商店街

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~徒歩で通える地元農産物の直売所、そこで生まれる住民交流~

商店街の様子 熊本県荒尾市では、1997年の三池炭鉱の閉山によって地域経済は低迷し、郊外に大規模ショッピングモールが立地してからは中央商店街の店舗も閉店が相次ぎました。内発型の産業創出が緊急の課題と考えた荒尾市は、「地域再生マネージャー制度」を活用し、若手の商店主が数人いる中央商店街に対し、街なかでのワイナリーをテーマとする取り組みへの協力と参画を呼びかけました。当初、多くの商店主から取り組み対する否定的な声があがりましたが、市の担当職員が何度も商店街に足を運び、粘り強く本音で説明・協力を求めるなかで商店主5人が、「リスクはあるものの軌道にのれば収益も見込めるらしい」「何よりも、自分たちを育ててくれた商店街は自分たちで再生しよう」という思いで一致。こうして5人のグループは、商店街の空き店舗を借り、青空まちなか研究室「青研」を拠点に活動を始めることになりました。
  ワインの販売・製造にこぎつけるまでには、さまざまな課題が持ちあがりました。なにより九州・熊本は焼酎文化であり、当時、メンバー5人中4人はワインを飲んだことすらありませんでした。初期の設備投資は、市からの空き店舗対策助成金のほか、サポーター制度により集めた資金を充てました。メンバー5人がサポーター集めに奔走し、約130人にサポーターとなってもらうことができました。さまざまな不安の中で始まったワイナリーでしたが、このサポーター制度によりいよいよ引き返せない状態となりました。
レジに並ぶお客さんの様子  ワインの製造免許が取得できるまでの1年、店舗の家賃やさまざまな管理・運営費用が発生し、その費用を賄うための収入も必要となりました。そこで、市の担当職員が知り合いの農家に呼びかけ、野菜を販売することで少しでも費用を捻出しようと考えました。これが地元農家から仕入れた農産物を販売する「青空市」の始まりです。オープン当初は農産物のみの販売であり、売上が1日に3~4万円程度と採算ラインには遠く及びませんでしたが、遠くまで買い物に行けない地域のお年寄りのニーズに合致し、食の安全・安心や地産地消の意識ともあいまって、徐々に固定客もつき、1日に約10万円の売上げをあげるまでになりました。その後、「中央青空企画」を設立し、ワイン「荒尾乃葡萄酒」も売り出すことができました。また、顧客の大半である近所のお年寄りからは、農産物以外にも他の食料品や身の回り品も揃えてほしいといったニーズもあり、徐々にそうした商品もそろえるようになりました。
  こうした取り組みによって、これまで郊外の店舗でまとめ買いをせざるを得なかった高齢者が、徒歩圏内で農産物や日用品を購入できるようになりました。さらに、店舗内では、レジの女性や生産者と会話を楽しむお年寄りの姿もみられます。「青研」は地域の住民にとって便利なだけでなく、いまや地域住民の交流の機会や場を提供するコミュニティ機能も果たしています。これは、店舗運営にかかるさまざまな作業やワインの仕込み、瓶詰め作業等を社員と企業組合メンバーが本業の合間に原則無報酬で行っているからこそ成り立っている仕組みです。しかし彼らは「お客さんからの”ありがとう”という言葉に応える」「地域への感謝・恩がえし」「商店街ななくなってほしくない」といった気持ちを持ち続け、今後も取り組みを展開していきたいと考えています。

商店街概要

商店街名 荒尾市中央商店街
所在地 熊本県荒尾市増永
組合(会員)数
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